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早稲田大学卒業式 田中愛治総長の式辞 [早稲田大学関連]

2022年3月25,26日


早稲田大学の学部卒業式、芸術学校卒業式、大学院学位授与式がありました。


田中愛治総長の式辞を以下に示します。




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  卒業生の皆さん、ご家族・ご親族の皆様、ご卒業おめでとうございます。卒業される皆 さんはもちろん、これまで卒業生を支えてこられたご家族・ご親族の皆様も、たいへんお 喜びのことと存じます。本日は、早稲田大学を代表して、私からお祝いの言葉を申し述べ たいと思います。

  本来であれば、卒業生の皆さんだけでなく、ご家族の方にもご参加いただきたかったの ですが、コロナウイルスの感染を防ぐため、卒業生だけに出席していただいています。た いへん残念ですし、申し訳ないと感じています。そうしたなか、皆さんがこのコロナ・パ ンデミックのもとで、無事に勉学を修めて卒業することを、私たち教職員はたいへん誇ら しく、嬉しく思っています。

  今年の卒業生は、特別な思いを持って、卒業されることと思います。この2年間、新型コ ロナウイルス感染症の拡大というパンデミックに、世界中・日本中が振り回されてきまし た。早稲田大学も例外ではありません。2年前の今ごろ、早稲田大学は 2020 年度の春学期 の授業をすべてオンラインで実施することを決め、キャンパスも一時的に閉じざるを得ま せんでした。その後も、体育各部や各サークルの活動には自粛をお願いしてきました。早稲田の学生の皆さんは、よく我慢をして、今日まで学内での大規模クラスターを発生させずに頑張ってくれました。皆さんのご協力に心から感謝いたします。

  早稲田大学は、2020年8月から2021年1月までの間に、教室の空調設備を更新し、すべての教室で1人当たり、1時間に30立方メートルの換気ができるように整えました。これにより、昨年度の4月から、7割を目標に対面授業を再開できました。さらに、昨年の7月5日から8月末までに、希望者全員を対象に2回のワクチン接種を実施できました。早稲田大学は、できる限りのことをしてきたつもりですが、それでも学生の皆さんの期待には、十分にはお応えできなかった部分もあるでしょう。至らなかった点については、申し訳なかったと思います。

  皆さんのなかには、最も充実すべき最後の2年間が失われた、という感覚をお持ちの方も おられるでしょう。しかし、コロナ・パンデミックの経験をネガティブに捉えず、この辛い経験が役に立つときがある、と信じて進んでいただきたいと思います。皆さんは、若い 学生時代に辛いことを経験したのですから、他の世代より一層強く逞しくなっていると思 います。

  皆さんが逞しくなっている、と感じた事例を挙げましょう。早稲田祭は、2020 年度はオンラインで配信し、2021 年度はオンラインと対面のハイブリッドで実施できました。体育 各部の活動ならびにサークル活動においても、皆さんは自粛しながら素晴らしい成績や成 果を残しています。とりわけ、厳しいトレーニングをやり通して、夏期と冬期のオリンピ ック・パラリンピックで大活躍をした選手たちを見ると、このコロナ・パンデミックの中2で、よくあれだけの活躍をしたなと、本当に誇らしく思い、心から敬意を表します。それだけ、皆さんは逞しくなったのです。

  今、私は「逞しくなる」という言葉を使いました。実は、私が3年半前、2018 年 11 月に 総⾧に就任してから提唱してきた理念が、「たくましい知性」を鍛えること、ならびに「しなやかな感性」を育むことなのです。

  「たくましい知性」とは、どういう知性でしょうか。今日、人類が直面している問題の多くには、正解がありません。たとえば、コロナ・パンデミックへの対策には、これが正解と証明されているものはありません。同様に、地球の温暖化による気候変動への対策も、 地球上の至る所に存在する貧困と格差の解決法も、現在のロシア政府指導者によるウクライナへの侵略と人権侵害への打開策も、どれをとっても正解を見つけにくい大きな問題です。

  皆さんが社会に出て向き合う問題の多くは、このように正解が教科書や専門書に記されて いない場合が多いと思います。ウクライナの人々への人権侵害やコロナ・パンデミックな ど、いま私が例に挙げた、人類全体が直面している問題ほどには大きくはないとしても、 皆さんが今後人生で向き合う問題には正解のないものばかりでしょう。そのような未知の 問題に果敢に挑戦して、自分の頭で自分なりの解決策を考え出す力、これを私は「たくましい知性」と呼んでいます。

  皆さんは早稲田大学で、「たくましい知性」を育み、「自分の頭で考える」ことを身につ けたと思います。「自分の頭で考える」ためには、やはり学問が重要なのです。学問とは、 文字が発明されて以来、5千年にわたる人類の経験のエッセンスが体系的にまとめられた ものです。もちろん、過去に人類が経験したことのない未知の問題の解決方法は、学問に は記されていません。しかし、学問をひもとけば、過去に人類がどのように、未知の問題 に挑戦したのかを、学ぶことができます。したがって、皆さんが未知の問題に挑戦する際 には、早稲田で修めた学問が座標軸となり、今後の人生の道標(みちしるべ)となってい くはずです。

  もう一つ大切なことは、「しなやかな感性」を育むことです。すなわち、異なる国籍・エ スニシティ・言語・宗教・文化・信条・性別・性的指向性を持つ人々に対して、敬意をもって接することです。そうした利他の精神を身につけることで、「しなやかな感性」は涵 養されます。とくにコロナ・パンデミックでは、国や民族の違い、あるいは経済的な格差により、弱い立場の人々がいっそう苦しむことになったと思います。そのことを肌で感じ る経験をした皆さんは、より一層「しなやかな感性」を育むことができたと思います。

  皆さんは、今、ウクライナで起きていることを目の当たりにして、どのように感じている でしょうか。このような状況でこそ、「しなやかな感性」が大切であると思います。ウクライナから早稲田に留学してきている学生たちは、今どんなに心細い気持ちでいるでしょ うか。同時に、ロシアから早稲田に留学してきている学生たちは、今どんな思いで祖国を 見つめているでしょうか、また自分たちロシア人が他国の人々からどう見られているかに不安を感じているのではないでしょうか。それぞれの立場に置かれた人々のことを思いやって接していけることが、「しなやかな感性」を持つことの大切さです。

  私は、ウクライナの人々が受けている人権侵害や殺戮を思うと、言葉に表せないほどの義憤と悲しみが湧いてきます。私自身は、政治学を研究してきましたので、なぜこんな理不 尽なことが起きているのか、なぜウクライナへの侵略を直ちに止められないのか、その理由がある程度、推測できます。それだけに、私たち人類にとってこの悲惨な状況を止める ための有効な手段がそれほど多くはないという歯がゆさを感じています。また、私自身が この侵略を止めることに直接に貢献できていない無念さも痛感しています。

  そうした中で、私が教育者の1人としてできることは、皆さんに早稲田で学んだことを心に刻み、卒業後の人生を歩んで欲しい、とお願いすることです。早稲田大学の創立者であ る大隈重信は、建学の精神として、「学問の独立」「学問の活用」と共に、「模範国民の造就」の大切さを説いています。「模範国民の造就」について大隈は、「一身、一家、一 国家のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負が無くてはならぬ」と述べ、利他の精 神の大切さを強調しています。この寛容の精神に照らせば、人権侵害をしたり、弱者を痛 めつけたり、他者を陥れるようなことは、早稲田大学の建学の精神に反することになります。

  すなわち、早稲田大学で学んだ者は、誰1人、人の道に外れたことをしない、人として行ってはいけないことをしない人間になっていただきたい、ということです。そのことを、卒業生の皆さんは、私たち教職員とともに、崇高な建学の精神をもつ早稲田大学という学問の府で学んできたはずです。このことは忘れないでください。

  最後に、皆さんにお伝えしたいことがあります。一昨年の4月、緊急事態宣言が発出され た直後に、早稲田大学は、経済的に困窮している学生に、1 人当たり 10 万円の緊急支援金を支給しました。そのとき、早稲田の卒業生たちは(本学では「校友」と呼んでいますが)、 「後輩たちが困っているなら、是非とも助けたい」と、学生への緊急支援のご寄付に積極 的に応えてくれました。寄付金額は、最初の 10 日間で1億円を超え、合計で9億円を超え たのです。私は、早稲田の校友を改めて誇らしく思いました。皆さんも、このことを忘れずに、卒業した後、早稲田の後輩を応援してあげてください。

  皆さんは、早稲田で学んだことに自信を持ち、コロナ・パンデミックの中で苦しい学生 生活をやりきったことを誇りとして、今後の人生を切り開いてください。   卒業後も、時々は母校に帰ってきてください。その時には、今よりも輝いている早稲田で、今よりも輝いている皆さんとお会いしましょう。 

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卒業生、学位受領者の諸君へ


おめでとう!


私は、上記式辞の


「学問をひもとけば、過去に人類がどのように、未知の問題 に挑戦したのかを、学ぶことができます。」を読んで、


自身の早稲田での学問の日々を思い出しました。


私のこれまでの人生を支えたのは、学問の日々です。


これまでの諸君は、


学校で教えられたことを確認するテストや入試で評価される日々だった。


これって、「答え合わせ」。


これからは、正解を解答するのではなく、


問題を提起して解決する人生を歩んでください。


そのためには、


「日々鍛錬し、いつ来るとも分からぬ機会に備えよ。」


そして、


たまには早稲田大学と早稲田の街に帰ってください。


早稲田大学鋳物研究所スキー部長

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